巨額の賠償責任を負うケースも
自転車の事故が最近増えています。
加害者になって巨額の賠償責任を負うケースも出てきています。
自転車事故の動向を整理してみました。
自転車事故の動向
交通事故の件数は減っているのに、自転車対歩行者の事故は大幅に増加しています。
全交通事故 |
自転車対歩行者事故 |
|
---|---|---|
2000年 |
931,934件 |
1,827件 |
2010年 |
725,773件 |
2,760件 |
増加倍率 |
0.8倍 |
1.5倍 |
出典:国土交通省資料および警察庁統計を基に作成
2000年と10年後の2010年の比較では、交通事故全体は2割減っているのに、自転車対歩行者事故は5割増えています。
加害者となった場合
歩行者を死傷させて巨額の賠償責任を負うケースも増えてきました。
有名なのは神戸市で小学校5年生の男児が67歳の女性に衝突した事件です。
女性は寝たきりで意識が戻らない状態が5年以上続いています。
神戸地裁は母親の監督義務不履行を指摘して、母親に9,500万円の賠償を命じました。
その内訳は、まず将来介護費3,940万円と後遺障害慰謝料2,800万円。
高齢の女性ですが、逸失利益も2,190万円が認められました。
もっと若くて収入の多い人だったら、逸失利益はもっと大きくなり、賠償総額は億を超えていたことになります。
こうした事例はほかにも発生しています。
携帯電話を操作しながら運転していた女子高生が看護師に衝突。
歩行困難に陥り、失職したために5千万円の賠償が命じられたケース(横浜地裁)。
夜間に無灯火で運転していた男性が事故を起こし、損害賠償2,500万円の支払いを命じられたケース(大阪地裁)などです。
自転車事故の賠償保険には加入していない人が多く、賠償金が払えなくて自己破産する人も少なくないそうです。
自分が事故を起こす場合、子供が起こす場合など、心配が増えてきました。
ちなみに自転車対歩行者の事故の被害者は、70歳以上の高齢者が過半数を占めています。
自分が負傷した場合
一方、自転車の運転者の死傷者数は、10代が突出しています。
自転車も高速で運転していて転倒すると、深刻な負傷を負うことがあります。
有名な例では、法務大臣や財務大臣を歴任した政治家の谷垣禎一氏があります。
趣味のサイクリング中に事故を起こし、脊髄損傷で政界を引退するに至りました。
法規制の動向
以上のような情勢を受けて、自転車運転に対する法規制も強化されてきています。
2013年に公布された改正道路交通法では、自転車で路側帯を走行する場合は、進行方向左側の通行が義務付けられました。
右側を通行した場合、3カ月以下の懲役または5万円以下の懲罰を受ける可能性があります。
自転車保険の加入義務化も進んでいます。
兵庫県では2015年から、大阪府では2016年から、条例で義務化され、京都も2018年4月からそうなる予定です。
自転車の保険
これからの時代、自転車運転者も保険に加入すべきだと考えます。
保険の補償対象としては、賠償責任と運転者本人の傷害・死亡があります。
賠償責任をカバーする既存の保険としては自動車保険の特約があります。
また、クレジットカードの付帯サービスとして提供されている場合もあります。
運転者本人の傷害・死亡をカバーする保険はまた別になります。
自転車事故だけの保険もでてきていますが、その前に現在加入している自動車保険の内容などをチェックした方がよいでしょう。
年間数百円程度の特約を追加するだけで問題が解決するかもしれません。